名古屋高等裁判所 昭和25年(う)614号 判決 1950年6月21日
被告人
首藤米一
主文
原判決を破棄する。
被告人を罰金千五百円に処する。
右罰金を完納することができないときは金百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
但本裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。
理由
弁護人兼松謙太郞の控訴趣意第一点について。
原判決によれば原審が昭和二十二年政令第百六十五号を適用するに当りこれを昭和二十三年政令第百六十五号と表示したことは所論の通りであるが連合国占領軍関係財産不法所持の処罰を規定する政令第百六十五号が昭和二十二年の制定公布に係ることは公知の事実であり且つこの政令と混同を生ずる虚のある法令もないのであるから原審の表示は不用意の間になされた誤記であることは一見明瞭でありこれを目して法令の適用に誤があるとなすのは当らない。
又昭和二十四年十二月十五日に昭和二十四年政令第三百八十九号が施行せられると共に右昭和二十二年政令第百六十五号が廃止され従つて原審の判決当時たる昭和二十五年一月三十日においては右政令第百六十五号は右政令第三百八十九号附則第二項によつて従前の行為に適用されていたものであつて本件昭和二十四年八月二十八日の行為については右政令第百六十五号と共に右附則第二項を適用すべきところ原審は右政令第百六十五号の法条を掲記しているが右附則第二項を掲記していないことは所論の通りである。然しながら右附則は具体的罰条の根拠を明かならしめる所謂総則的規定と解すべく原審が右附則に基く右政令第百六十五号の法条を掲記している以上その附則を適用していることはおのずから明かであつて原判文にこれを掲記しなかつたことを以て直にその適用を逸脱した違法があるものとはいえない。
(註 本件は量刑不当により破棄自判)